自動車免許の筆記試験で、答えに絶対納得できない問題があります
ミニカーの荷台には、60kg以上の荷物を積んではならない。〇か×か。
自動車免許の試験問題だ。
すでに免許を持っている方や免許をとろうとしている方は知っているかもしれない。
教習所では「ミニカーの荷台には30㎏を超える荷物を積んではならない」と教わる。
15㎏はセーフであり、40㎏はアウトである。
とても明確だ。
さて、例の問題を考えてみる。
ミニカーの荷台には、60kg以上の荷物を積んではならない。〇か×か。
当たり前だ。60㎏以上の荷物を積んだら違反である。
なぜならば30㎏以上は許されていないからだ。
答えは〇
自身がある。
天地天命に誓っても〇である。
答えを見た。
えぇぇ、、、
×と書いてあるのだ。
意味が分からない。解説を読んだ。
解説にはこう書いてあった。
ミニカーの荷台には30㎏をこえる荷物を積んではならない。したがって問題文は誤り。
えぇぇ、、、
僕は「ミニカーは30㎏を超える荷物を積んではならないから60㎏を超える荷物を積むのは当然ダメ」と考えた。
しかし、解説は「ミニカーは30㎏を超える荷物を積んではならないから、60㎏を超える荷物を積むのは違う」としている。
「ミニカー 積載」で検索!
こんな時はGoogle先生である。
題のようなキーワードで調べた。
Yahoo! 知恵袋がヒットした。
質問者と回答者の主張をここに引用する。
質問者の主張
「ミニカーの荷台には、60キログラムを超える荷物を積んではならない。」
この答えは×なのですが、○でも間違いではない気がします。答えの解説によると、「ミニカーの積載物の重量制限は、30キロまでである」と書いてあるのですが、問題文では最大積載量が何キロかと問われているわけではないので、60キロを超える荷物を積んではならないって言うのは、一様正しいことになると思うのですが、どう思いますか?
回答者の主張
「ミニカーの荷台には、60キログラムを超える荷物を積んではならない。」
と言う命題に対しての論理学でいうところの「対偶」は、
「ミニカーの荷台に積んでも良い荷物の重量は、60キログラム以下である。」
(別の言い方をすれば「ミニカーの荷台には、60キログラムを超えなければ荷物を積んで良い。」)
となります。
「最初の命題が正しければ、その対偶も正しいものにならなければなりません」が、道交法から言えば明らかにこの対偶は間違っていますから、論理学上の観点からは「最初の命題も間違っている」としなければなりません。
すこし整理してみよう。
質問者の主張
僕とほとんど同じである。というか、同じ悩みを持つ人が世の中には居るものだなぁと...
少しうれしくなった。
回答者の主張
回答者は、
論理学において、ある命題が真ならばその対偶も真であり、ある命題が偽ならばその対偶も偽である、という事実を用いている。
そして例の問題の答えが×であることも、対偶をとれば自ずとわかるのだ、と主張している。
果たしてそれは正しいのだろうか。
これを検証するために考えていこう。
対偶をとるとは
法令では
「ミニカーの荷台には30㎏を超える荷物を積んではならない」
と規定されている。
これは真であり、絶対に揺るがない。
さて、問題の文は
「ミニカーの荷台には、60キログラムを超える荷物を積んではならない。」
だった。
では、この対偶をとってみよう。
「60キログラムを超える荷物を積んで良いのは、ミニカーの荷台ではない」
である。
回答者の主張する対偶は、
「ミニカーの荷台に積んでも良い荷物の重量は、60キログラム以下である。」
であるが、これは間違いである。
「対偶をとる」とは、「pならばqである」という命題に対して、以下の2つの手順を踏む作業のことである。
(1)pとqをそれぞれ否定
(2)因果関係を逆転させる
つまり、「pならばqである」に(1)を適用して
p → pでない
q → qでない
を得る。
次に(2)を適用する。因果関係を逆転するのである。
つまり、「qでないならばpでない」である。
だから、先ほど述べたように
「ミニカーの荷台には、60㎏を超える荷物を積んではならない」
の対偶は
「60㎏を超える荷物を積んで良いのは、ミニカーの荷台ではない」
となるのだ。
回答者は対偶をとったと主張しているのにも関わらず、そもそも因果関係を逆転していないのである。
さらにいうと、元の命題と「荷物」にかかっている修飾語が違うのである。
そもそも、「荷物」の修飾語は「60㎏を超えた」であった。
しかし、回答者は対偶(?)を取った後「荷物」を「ミニカーの荷台に積んでも良い」で修飾している。
言葉の修飾関係は、対偶をとっても変えてはならない。
全くの間違いである。
したがって、この知恵袋の回答は無効である。
そもそも対偶をとる意味はあったのか
お気づきの方が多いと思うが、例の問題文の対偶はもとの文よりも分かりにくくなっている。
「60㎏を超える荷物を積んで良いのは、ミニカーの荷台ではない」
大変まわりくどい。
わざわざ対偶をとったのに、むしろ分かりにくくなっている。
無駄な作業と言わざるを得ない。
しかし、あえてこの対偶の命題で考えてみよう。
そこで、
「60㎏を超える荷物を積んで良いのはミニカーの荷台ではない」
という対偶の命題を、論理学の厳密さを失うかもしれないが、少しだけ言い換えてみよう。
60㎏を超える荷物を積んで良い車は、ミニカーではない。
としてみた。ほぼ対偶の命題と同義になる筈だ。
60㎏を超える荷物を積んでよい車はもちろん存在する。
でも、ミニカーはその車に該当しない。
だって、ミニカーには30㎏を超える荷物を積んではいけないから。
対偶もどう考えても〇である。
対偶の対偶は元の命題であるから、
「ミニカーの荷台には60㎏を超える荷物を積んではならない」
もまた〇である。
対偶の真偽を考えても結論は変わらない。
「60㎏以下なら積んで良い」とは言い換えられない
「ミニカーの荷台には、60㎏を超える荷物を積んではならない」
に対して、
これはつまり
「60㎏以下の荷物なら積んでもよい」と解釈できるから×
と言う人がいる。
一見その主張は正しいように思えるかもしれないが、これもまた重大な間違いである。
「60㎏を超える積載を禁止」=「60㎏以下の積載を許可」
は厳密には同じではないのである。
子どもに「人の頭を叩いてはいけません」と叱ったとしよう。
子どもはそれに従ったが、翌日からは人の尻を叩くようになった。
それを見た親は、いやー、別に尻を叩くことを許可してないんだけどなぁ...と思って今度は
「人の尻を叩いてはいけません」
と注意する。
子どもはその注意に従い、翌日子供は人のみぞおちを叩くようになった、以下同文。
「Aを禁止する」というのは「A以外の許可」ではないのである。
だから、「60㎏を超える積載を禁止」する文は「60㎏以下の積載を許可」したことにならないのだ。
このような理由で
「60㎏以下の荷物なら積んでもよい」と解釈できるから×だ
とするのも間違いなのである。
「60㎏を超えて積むのはダメ」という文章を「60㎏以下なら積んでもよい」と解釈することは絶対にできない。
まとめ
結論として
ミニカーの荷台には、60kg以上の荷物を積んではならない。〇か×か。
の答えは〇であり、公式の解答は誤りである。
いち早く関係者にこの記事の存在を知って頂きたく、切に願うばかりである。
2017/5/28 森見ますお