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「なぜ書くのか」に対する芥川龍之介の答え

 僕が今抱えている課題として、ブログを続けるモチベーションを維持する、ということがあります。

 

モチベーションを維持には、技術が必要です。

 

でも今までその技術を得るためのヒントすら見つからず、困っていたのです。

 

しかし昨日、思いがけない所でそのヒントを得ました。

 

芥川龍之介全集を読んでいたところ、「はつきりした形をとる為めに」という題で、彼自身のモチベーションについて触れられていて、おや、と。

 

それで、これをブログの記事にしてやろうと思ってニヤニヤしながら今、編集画面の前にいるわけです。

 

その内容なのですが、ざっくり言うと、芥川龍之介が「中村さん」という人に「どんな要求によつて小説を書くか」というお題を出されてそれに答えている文章です。

 

「中村さん」って誰だ、という話は置いておきまして、まず「中村さん」の出したお題が分かりにくい気がしますが、大体「どうして小説を書くんですか?」というようなところだと思います。

 

気になる答えですが

 

が、大体あなたの問題は「どんな要求によつて小説を書くか」と云ふ様な事だつたと記憶してゐます。その要求を今便宜上、直接の要求と云ふ事にして下さい。さうすれば、私は至極月並みに、「書きたいから書く」と云ふ答をします

 (太字強調は僕が勝手につけさせて頂きました。以下の引用も同じです。)

 

書きたいから書く」と、本人の言う通りとても月並みですが芥川級の人が言うと重みが違いますね。

 

彼はさらに付け加えます。

 

之は決して謙遜でも、駄法螺でもありません。現に今私が書いてゐる小説でも、正に判然と書きたいから書いてゐます。原稿料の為に書いてゐない如く、天下の蒼生の為にも書いてゐません

 

別に小説を書くのは金の為でもなければ世のため人のためでもない、という訳です。

 

僕もかつて金をモチベーションにアフィリエイトサイトというものに手を出したことがあるのですが、お金を稼ぐことは例外なく辛いものでして、挫折をしました。

 

別に芥川が「金を求めるとモチベーションが続かなくなる」と言っているわけでは無い点に注意したとしても、少なくともモチベーション維持に金は必要ないことは言えるのではないでしょうか。

 

次に、「世のため人のためでもない」ということに関してですが、これは「天下の蒼生の為」というのを僕なりに解釈したものです。

 

ちょっとこの解釈はやりすぎかもしれませんが、この場ではどうかお許しください。

 

その上で、「世のため人のため」に書いているつもりのブロガーやライターも多いでしょうが、その多くは周りから見れば飛んだお節介です。

 

世のため人のため」にモノを書いてやろう、というのはあまりに横柄なことだとは思いませんか?

 

世のため人のためになっている」かどうかは、自分で判断することではなく、人が判断することなのですから。

 

人のためだと勘違いしている輩の文章は腐っています。モチベーション以前の倫理的問題です。

 

 

以上の2点、自分も物書きのはしくれとして、見習わなければなりませんね。

 

この後、彼はさらに意見を深めます。

 

ではその書きたいと云ふのは、どうして書きたいのだ―――あなた(森見注:中村さんのこと)はかう質問するでせう。が、夫は私にもよくわかりません。唯私にわかつてゐつ範囲で答へれば、私の頭の中に何か混沌たるものがあつて、それがはつきりした形をとりたがるのです。さうしてそれは又、はつきりた(ママ)形をとる事それ自身の中に目的を持つてゐるのです。だからその何か混沌たるものが一度頭の中に発生したら、勢いやでも書かざるを得ません。さうするとまあ、体のいい強迫観念に襲われたやうなものです。

 

読んでみてどうでしょうか。

 

皆さんにも、ふと、漠然とした考えを持つことがあると思います。

 

それは電車に揺られているときかもしれないし、風呂につかっているときかもしれませんが、芥川にもそういうことが何回もあったということでしょう。

 

この引用部を読んでいると、彼の場合

 

浮かんでしまった漠然としたアイディアを文章にして具体化したい

 

という欲が相当に強かったらしいのです。

 

彼の記述によれば、それは欲というよりはむしろ強迫観念のようなものだったらしいですね。

 

もしかしたらこれは、芥川に限らず、皆さんの中にも潜在的に存在する願望かも知れません。

 

勉強をしていて、仕事をしていて、人と話していて、テレビをみていて、

 

(なんだかなぁ...)

 

と思うことがある。

 

それを何か具体化してみたい、という願望です。僕にも少しありますがいかがでしょう。

 

 

文章を書く人にとって、この欲は生命線でしょう。

 

この欲は積極的に強くしていくべきだと思います。

 

欲を開発するのです。

 

「欲を開発」する、と言ったら別のものを連想させるので困っているのですが、この表現しか見つからないので許してください。

 

 

漠然としたアイディアを文章にして具体化したい、という欲をどんどん開発していくことが大事なのだと思います。確実にモチベーションにつながっていくはずです。

 

まとめると

芥川が小説を書くモチベーションの重要な部分としてまず、

 

  • 書きたいから書く
  • 金の為ではない
  • 人の為ではない

 

というのがあって、さらになぜ書きたいかというと

 

  • 漠然としたアイディアを文章で具体化したいという欲にも似た強迫観念がある

 

となります。

 

それに対する僕の解釈や僕が得た教訓は

 

  • 金目当てはモチベーション維持が難しい
  • お節介は勘違いなので内容が腐る(モチベーション以前の問題として)
  • 「漠然としたアイディアを文章にして具体化したい欲」を積極的に開発するべき

 

以上3点です。

 

どういったモチベーションでブログを書いていくのか、以前よりは明確になりました。

 

皆さんは芥川のこの文から何を考えますか?

 

よろしければご意見お聞かせください...

 

2017/6/22 森見ますお