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名言に潜む病

先日、頭の良い友達と「文章を書く上で重要なことは何か」について話題に上った時、「意味が伝わるのが何よりも重要だよ」とドヤ顔で主張したところ、「理由は何だ?」と聞かれて言葉に詰まり、撃沈しました。

 

そもそも、僕が「意味が伝わるのが何よりも重要だ」とドヤ顔で主張したのはなぜか。

 

論語』にこういう一節があります。

 

子曰く、「辞は達するのみ」

 

どういう意味かというと、

 

先生がいわれた。「文章は、意味が伝わるのが何よりも大切だ」

斎藤孝訳『論語』ちくま文庫 2016年 

 

という意味です。

 

そして、会話中にこの言葉が脳裏をよぎり、「あの孔子様が『論語』でおっしゃっているのだから、そうなのだろう」という確信を得てしまった。そして、「意味が伝わるのが何よりも重要だ」とドヤ顔で主張してしまったのです。

 

 しかし、友達は頭が良かった...僕の甘さを的確に突いてきたのでした。

 

名言を知るだけで喜ぶ愚行

孔子様の「辞は達するべき」という名言は、説得力があります。

 

なぜ説得力があるのか?

 

例えば、医者に「お前は癌だ」と言われるのと、その辺のおじさんに「お前は癌だ」と言われるのでは、まるで説得力が違います。

 

同じように、孔子様が「意味の伝達が大事」というのと、僕が「意味の伝達が大事」というのでは、まるで説得力が違うのです。

 

そう考えると、名言は名言自体に意味があるのではなく、「実績ある人がその言葉を言ったこと」に意味があると言えそうです。

 

名言を知ったからと言って、それだけで喜んではならないのです。

 

名言の使い方

一方、使い方さえ間違えなければ、名言は強い味方になります。

 

名言に自分の経験を重ねてあげれば良いのです。

 

友人の「理由は何だ?」という質問に対しては、

 

「意味を伝えることを重視したブログ記事は、よく読まれる傾向にある。だから、何よりも意味を伝えることが重要だと思う。実は『論語』に「辞は達するのみ」とあって、僕もそれを実感しているよ」

 

と言う風に答えるべきでした。

 

しかし、「辞は達するのみ」に関して、僕自身、経験的裏付けをあまり持っていませんでした。だから、上記のように上手く返答することができなかったんですね。痛い経験をしました。

 

受け売りというのは恐ろしいものです。

 

ところで今、『論語』をパラパラとめくっていたのですが、こんな一節がありました。

 

子曰く、

「道に聴いて塗(みち)に説くは、徳を之れ棄つる也」

 

意味は、

 

先生がいわれた。

「どこかで聞いた善いことばをそのまますぐに受け売りで話してしまう者は、それを身につけることをしないのだから、徳をむしろ棄てていることになる」

斎藤孝訳『論語』ちくま文庫 2016年 

 

 です。

 

いやはや、手厳しい(笑)

 

受け売りは、やっぱしない方がいいです。名言を知るだけで喜ばないで、それを身につける努力をしないといけませんね!

 

(この引用は受け売りじゃないよね! 経験をともなっているからね!)

 

ということで、今日はこんな感じです! おしまい。