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論破してください:情報リテラシーのための論理力

 

情報リテラシーが求められる現代社

 

ネットの有力者による主張は私たちの行動に大きな影響を与えます。

 

彼らが世に放った主張の多くは、論理的かつ現実的で、さらには時代を捉えている素晴らしいものが多いです。

 

しかし、どんなに有力でも、どんなに説得力があっても、彼等にも論理の傷があります。

 

これら論理の傷を如何に見抜くかが、情報化社会を生き抜くうえで重要です。

 

いわゆる「情報リテラシー」と呼ばれる感性が大事なのです。

 

情報収集の作法

 

先にお断りしておくのですが、この記事は「ネット有名人批判」を目的とした記事ではありません

 

誰でも論理の弱点はあります当たり前です。論理の矛盾は良いことだとは言いません。

 

しかし、論理の矛盾があったところで、それを利用して発言者のすべてを否定することはハッキリと悪だと考えています。

 

人の発言のうち、理に適っている部分を取り入れつつ、論理破綻した部分は静かに無視する。

 

これが、作法というものでしょう。

 

論理力は知識でカバーできる

自分は論理的じゃないから...」「論理になるのって難しそう

 

と思う方もいるかもしれません。

 

なるほど、高レベルの論理力をもった人たちは、その天才性によって感覚的に論理を知覚しているかもしれません。

 

しかし僕は、論理力の大部分は正しい知識を得ることによって獲得可能だと信じています。

 

ということで、以下の問題を実践してみて下さい。 

 

以下の文章を読み、論理的な批判を与えてください(論破してください)

1.

 僕は塾講師のバイトをしている経験上、生徒の顔つきと得意科目には関係があるということに気がつきました。数学が得意な子はいかにも数学的センスがありそうな顔をしているし、英語が得意そうな子は、そういった気風が顔に出るのです。もし、目の前に5人の高校生を並べられたら、僕は確実に彼らの得意科目を当てることができる程には関係しているようです。もし当たらなかったとしても、それはその子の勉強が甘いからです。

 

2.

 ところで、得意科目が性格に与える影響もあるようです。物理が得意な人は普段からエネルギーを保存をする省エネな性格であり、政治・経済が得意な人はカネに汚い、というのは嘘ですが、少なくとも人を論理的にする科目はあるようで、数学が得意な人は論理的です。なぜならば、僕のまわりで数学が得意な人は、みんな論理的だからです。

 

3.

 話は変わるのですが、僕の努めている塾の塾長は以前は研究者をしていて受動喫煙の害について研究していたそうです。彼は僕に「受動喫煙はカクカクシカジカだから子供の発育にも悪いんだよ」と語ってくることが多いのですが、彼自身、子どもの多い塾の教室でタバコを吸いまくっていではありませんか! そんな輩の話など取り入れるに値しない暴論でしょう。

 

 

さて、論破する方法はたくさんあると思います。皆さんなりに考えてくださいね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解答例

1.その主張は「先決問題要求の虚偽」に陥っている。「得意科目と顔つきが関係する」ことをまず最初に証明するべきなのに、いつの間にかそれが前提となっており論理破たんを起こしている。

 

【解説】

要約すると、

 

得意科目と顔つきが関係する。もしそうでないとしたら、その子の勉強が足りないのである。

 

といった論理展開となります。この論法を先決問題要求の虚偽と言います。

 

 

「得意科目と顔つきが関係する」ということを先に証明しなければならないのに、いつの間にかそれが前提と化し「もしそうでないなら、そいつの勉強が足りない」というすり替えを起こしているのです。

 

2.その主張は「性急な一般化」に陥っている。数少ない周りの人間の傾向から「数学が得意な人は論理的だ」という結論を出すのは性急と言わざるを得ず、一般性に欠く。

 

【解説】

要約すると

 

周囲の人のうち数学が得意な人はみんな論理的→数学が得意な人は論理的

 

となります。この論法を「性急な一般化」と言います。

 

 

 

自分の周囲の人の傾向など全世界的に見たらほんの一部に過ぎず、そこから何も論証を挟まずにその傾向を一般化するのは勇み足、ということです。

 

少ないサンプルの傾向を詳しく分析することで、ある原理を抽出し、それを一般化する、というプロセスがあればまだ説得力があります。

 

しかし、少ないサンプルの傾向を全く分析せずにそのまま一般化するのは、無理があるのです。

 

3.その主張は「対人論証」という詭弁である。「受動喫煙は子どもの発育に害」という塾長の主張自体を吟味せず、塾長自体を非難することで彼の主張すら棄却しようとしているのは論理的でない。

 

【解説】

要約すると

 

塾長は「受動喫煙は子供の発育に害」と主張するが、塾長自身が教室でタバコを吸い、子供に受動喫煙をさせている。そのような人の主張は取り入れるべきではない。

 

となります。これは「対人論証」という詭弁に分類されます。

 

 

人と論は切り離すべきで、人がどんな行動をしていようが論の正否に影響はない、という立場から考えれば、この主張は詭弁に当たります。

 

しかし、ある意味これは微妙な問題をはらんでいます。

 

どう考えてもこの塾長は最悪な人間です。

 

そんな奴の主張を取り入れるべきではない、という主張も、間違いとは言い切れないのが人間感情というものでしょう。

 

しかし、塾長は受動喫煙の害を研究してきたわけで、「受動喫煙は子供の発育に害」という彼の主張は論理的には正しいはずなのですが...

 

さあ、どうするべきなのでしょうか?

 

詭弁だと言っておいて、読者の皆さんに判断をゆだねる勝手を、どうかお許しください。

 

まとめ

3つの例文で、論理に関する知識を紹介しました。

 

この他にも論理に関する重要な知識は山ほどあります。今回紹介したのはそのうちの氷山の一角に過ぎません。

 

しかし、この数少ない例を知るだけでも、皆さんの情報リテラシーは格段に上がると信じています。

 

是非、この情報化社会をご自身の論理力で生き抜いて下さい。

 

2017/6/28 森見ますお