その薬は安全か?:医療系記事の倫理性
医学的なことに言及する記事をみて思うことがあります。
トピックは、特定の薬、手術、治験、放射線治療など様々ですが、インターネット上には、それらを取り上げて「何々は安全か危険か」を議論する記事があふれています。
しかし、大体の記事は数値による説明に欠いていて、ナンセンスです。
それを欠いている物は前提条件すらクリアしていない状態と言っても良いでしょう。
しかも、数値による説明を用いたところで、物事の安全性を判定することは困難です。
ですから、その前提すらクリアしていないものに読む価値は見出しにくいです。
否、読む価値が見いだせないというよりも、むしろ悪質とまで言えるのです。
そもそも「安全」か「危険」かという二元論ではない
ある物事が「安全」か「危険」かということを安易に判断することは、それこそ「危険」です。
「絶対に安全なもの」があるでしょうか?
ないですよね。物事には必ず危険が伴います。
そこで大事になってくるのが、どんな確率でどの程度の「危険」があるのかを評価することです。
数値は重要な判断基準である
どんな確率でどの程度「危険」なのかを知る重要な情報として、統計による数値、があります。
「車は危険か?」 という問題を考えるには、車の事故に関する統計を知らないことには判断できないでしょう。
ちなみに普通車の事故率は約0.04%、つまり10000回のうち4回です。
そのうち死亡する確率はずいぶん大雑把に計算して1%ですから、普通車に乗って死亡する確率は百万回に1回です。(データが怪しいので、間違っていたら教えてください)
「車が危険かどうか」の判断に数値は相当役立つでしょう?
しかし、数値は意味を語らない
しかし、この数値をどう見るかは人によって千差万別。
数値は確率を示しているだけで、それ自体に「安全」とか「危険」とかいった意味を含んでいるわけではありません。
数値はあくまでも数値であり、意味を語らないのです。
強いて数値が意味を語ることがあるとしたら、比較対象がある時です。
飛行機の死亡率は自動車の死亡率より低いことが知られています。
そのことから、飛行機の方が自動車よりも安全であることが言えます。
しかし、この結果からですら「飛行機は安全かどうか」を判断できないことに十分注意するべきです。
危険かどうかなど安易に判断するものではない
物事の危険性を判断する重要な視点である数値をもってすら、安全か危険か判断することはできないのです。
さらに言えば、その数値は不正確かもしれないのですよ?
物事が安全か危険かどうか、安易には判断できないです。
医学に関するものは一歩間違えれば大勢の人が死ぬ
この重大さは多くの人に認識していただきたいです。
しかし、インターネットの世界には執筆者の利益追求のためだけに、事実を歪曲している記事が多く見られます。
使っている統計は合っているが、その切り取り方による印象操作があったり、それこそ、「安全」「安心」といった言葉をまぶすことによる誘導があったり、様々です。
医学分野に関して、安易なことを流すのはやめて頂きたいとともに、読者の皆さんにおかれましては、十分注意なさるよう願うばかりです。
森見ますお 2017/6/26