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国語入試問題必勝法

 

 

タイトルにつられて思わずクリックした受験生がいたら大変申し訳ない。

 

はっきり言うが、この記事は受験に全く役立たない。

 

こんな記事を読んでいる暇があったら勉強した方がマシである。

 

 

清水義範『国語入試問題必勝法』

 

 

この本について、日垣隆『つながる読書術』という著書でこう紹介している。

 

とにかく笑える。自分の作品が国語の試験問題に使われた作家で、全問解けた人はいないらしい。私も然り。五〇字以内で主人公の気持ちがまとめられるなら、わざわざ本なんて書かない!

 

こう絶賛している。

 

短編集であり、その中に国語入試問題必勝法という小品が収録されている形だ。

 

腹筋崩壊間違いなし。今日はこの本に収録されている作品の中から3つ選んだ。それらを簡単に紹介していく。

 

1.猿蟹合戦とはなにか

一番最初に収められている作品。

 

古文調に書かれているのがなかなか面白い。

 

猿蟹合戦を組織力の物語というのは馬鹿げているらしい。

 

その代わりに、猿蟹合戦は何の物語なのだろうか。

 

清水の答えに、笑いを誘われながらもうなずいてしまった。

 

なんと、猿蟹合戦には男女の闘争という主題が隠されている、というのだ。

 

さらには、猿蟹合戦には性欲の象徴がちりばめられている、との主張も(笑)

 

なぜか? それは読んでのお楽しみである。

 

 

2.国語入試問題必勝法

 

選択肢問題の解き方。 

 

長短除外の法則

長い選択肢や短い選択肢はまず除外する、という技。それらは受験生の目につくから、出題者はそれを答えにしたがらないそうだ。

 

正論除外の法則

いかにも立派な正論めいたことが書いてある選択肢は除外する、という技。正論で受験生を翻弄したいという出題者の手口らしい

 

嘘つけww と突っ込みたくなるが一理ある。

 

ウィット・含蓄、ともに豊富な作品である。

 

3.靄の中の終章

語り手は認知症の爺さんである。

 

腹がへって目がまわりそうである。起きてからもうかなり時間がたつというのに、まだ朝食を食べていないのだ。

(中略)

掃除機をかかえて私のいる縁側に続く座敷にやってきた加津子さんに私は怒りをおさえた声で話しかけた。

「加津子さん」

「はい」

(中略)

「一体、いつになったら私に朝ごはんを食べさせてくれるんだね。もう腹が減って我慢ができんよ」

 

 この後爺さんは息子の嫁、加津子さんに「さっきご飯を6杯も食べたばかりじゃないですか」と諭され、赤面することになる。

 

爺さんは自分が馬鹿にされたと思い、憤りを感じる。

 

なぜこんなに馬鹿にされなければならないのか考え込んでしまう。

 

私は暗い気持ちでぺたりとすわり込んだまま黙って考えていた。

妙に頭がぼんやりして、なかなか考えがまとまらない。

 腹がへっているから思考がまとまらないのだ、と私は思った。起きてからもうかなりの時間がたつのに、まだ何も食べていない。

 

 

こういう風にして、さっきのことを忘れてしまうのか...

 

清水の発想の勝利ともいえる秀逸な作品。是非ご堪能あれ。

 

まとめ

清水義範の作品はまだまだ面白いものがたくさんあるので、おいおい他の著書も紹介していきたい。

 

 2017/6/25 森見ますお